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福岡高等裁判所 昭和50年(ラ)80号 決定

抗告人

九州建設機械販売株式会社

右代表者

矢野善助

右代理人

稲澤智多夫

外一名

相手方

株式会社ユーホー

右代表者

江口魁

相手方

有限会社江口自動車工業

右代表者

江口魁

主文

一  原決定を取消す。

二  抗告人があらたに金五〇万円の保証をたてることを条件として、

(一)  福岡地方裁判所久留米支部昭和五〇年(ヨ)第二四号仮処分申請事件において、既に別紙目録記載の物件を保管中の執行官は、同物件の保管を相手方らに委託することを解除しなければならない。

(二)  この場合執行官は、右物件の保管を抗告人に委託することができる。

三  原審並びに当審における訴訟費用は相手方らの負担とする。

理由

本件抗告の趣旨は、主文一項同旨の裁判を求めるというにあつて、その理由の要旨は、原審は、保全の必要を認めるに足りる疎明がないとの理由をもつて抗告人の申請を却下したが、その判断に不服であるというのである。

接ずるに、本件記録によれば、抗告人と相手方らとの間には、昭和五〇年四月二四日に、抗告人を債権者、相手方らを債務者らとする福岡地方裁判所久留米支部昭和五〇年(ヨ)第二四号仮処分申請事件における仮処分決定(以下第一次仮処分という)が発せられ、その内容は、「債務者らの別紙目録記載の物件に対する占有を解いて、福岡地方裁判所久留米支部執行官にその保管を命ずる。執行官は使用を許さないことを条件に、右物件の保管を債務者らに委託することができる。この場合において執行官は、その保管にかかることを公示するため適当な方法をとらなければならない。」というものであること及び右第一次仮処分事件の本案請求の訴訟物は本件申請事件のそれと同一であることが認められるが、一方本件における疎明資料を検討すれば、相手方らは、本件機械の占有を近々申請外ダイエイリース株式会社に移転するおそれがあり更に右申請外会社は、これを他に転売し、善意の第三取得者の手に渡ることも十分考えられ、かくては、第一次仮処分の効果は全く滅殺されることにもなりかねず、また本案訴訟による抗告人の権利実現も容易でない結果となつて、抗告人は重大な損害を蒙るおそれがあるものと認めることができる。しかも第一次仮処分においては、相手方らは本件機械の使用を禁じられているのであつて、その委託による保管を解除されたとしても相手方らの蒙る苦痛の程度は極めて稀少であると考えられることをも考慮すれば、本件仮処分申請はその理由があるものといわざるを得ない。

さればこれと趣旨を異にする原決定を取消し、当裁判所において、抗告人の申立に則り第一次仮処分決定を変更する趣旨の主文掲記の仮処分決定をなし、原審並びに当審の訴訟費用は民訴法九六条、八九条、九三条に則り、これを相手方らに負担させることとする。

(生田謙 二右田堯雄 日浦人司)

物件目録

建設機械一台

名称 トラックタイプトラクター

型式 D7F

製造者 キャタピラー三菱株式会社

製造番号 92E1780

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